リストラ・サラリーマンサバイバル(仮題)

20年以上勤めた会社からリストラを示唆されました。

リストラ勧告

3月初旬、元上司である親会社の管理部長が突然訪問してきて、グループ外の会社への転籍を告げられた。

僕はそれがリストラの勧告であるということがすぐに分かったが、一通り元上司が言うことを聞くことにした。

 

彼が言うには、会社グループの傘下で事業売却が進んでおり、会社グループの一般管理部門の要員を4割削減する計画があるとのこと。

僕が現在勤めている会社は、親会社の子会社の位置づけであるが、僕のような一般管理部門の人間は、基本的に子会社の管理部門に割り当てられ、定期的にローテーションをして、親会社や他の子会社に異動する仕組みになっている、と聞いている。

僕は現在勤めている会社に来て3年となるので、そろそろローテーションの話が出てくると思っていた矢先、突然のリストラ勧告であった。

 

これまで僕は仕事柄、人事異動なども担当していたが、人員削減でリストラを実施した経験は無い。

しかし、リストラを宣告された時の対応法は、仕事柄、一般の社員より知識は豊富であった。

 

僕は一計を案じ、元上司に次のように答えた。

「僕の実家の方で少しごたごたがあり、両親から帰って来てくれないかと言われている。」(これは半分事実)

「人員削減が必要なのであれば、希望退職なども計画されることでしょう。僕は、グループ以外の会社に転籍するくらいであれば、前々から考えていたことですが、退職して実家の方へ戻ることも一つの選択肢として検討したいと思います。」

 

この時元上司は、希望退職の計画があるとは断言していなかったが、4割の人員削減となると孫会社を含めたグループ内では到底人員を吸収しきれないので、希望退職が実行される可能性が高い。

希望退職の場合、自己都合退職ではなく会社都合退職扱いになるため、退職金の割り増しがあったり、失業保険の給付を受けるときにも有利になる。

僕は、辞めても良いということを上司にほのめかす一方、グループ外の〇〇社へ転籍になることは断る形となった。

 

元上司は僕の反応が予想外のだったと見え、苦笑しながら僕の実家の話などを聞いてきたが、僕は適当に話をそらし、世間話をして30分ほどで面談を終え、元上司を送り出した。

 

その後冷静になり調べてみると、僕の会社グループの経営状況は非常に悪いらしい。

今まで安穏にサラリーマン生活を送ってきたので、真剣に自分の将来のことを考えて来なかった僕は、リストラ計画の進展に急に不安を覚えた...

元上司から突然の電話

3月初旬、年度末で忙しい中、元上司である親会社の管理部長から電話がかかってきた。

「これからそっち行くけど、いるか?」

僕が勤務する会社とその親会社は、電車で一時間ほど離れた場所にある。

忙しい時期だが、断る理由も無いので「良いですよ」と答えた。

「じゃあ、5時くらいにはそちらに着くから」と言って、一方的に電話が切られた。

夕方5時に来るなら飲みにでも誘うつもりなのかと思ったが、新型コロナの緊急事態宣言中なので、それは無いだろう。

当日いきなり電話をしてきて話があるということは、きっとロクなことでは無いだろうと思い、その後の仕事が手につかなかった。

 

そして5時過ぎに元上司が到着したので、予約しておいた会議室に案内して対面した。

普段はズケズケとモノを言う元上司だが、ぎこちなく世間話をし始めた。

こういう時はなにか悪いことを企んでいる...

若干身構えながら話をしていると、元上司が唐突に切り出した。

「ところで、あなた〇〇社(当社の取引先)に行く気無いか?」

「...それはどういうことですか?」

「〇〇社で面接して、良ければそっちに行ってもらおうと」

「...出向ですか?転籍ですか?」

「転籍で...」

 

20年以上勤めた会社で人事部門の経験もある僕は、それがリストラのための面談であるということがすぐに分かった。